挑むたびに脳の焼き切れる感覚に震え、繰り広げられる会話に感心し続ける…。
挙げ句の果てに聞き手の人生さえ変えてしまう仕事、インタビューライティングをご存知でしょうか。
「仕事としての会話」のおもしろさ、衝撃でした。
特定の人物から聞いた専門的な話をもとに記事やコンテンツを作る仕事で、内にこもるイメージの強い「文章を書く仕事」の中でも、外との繋がりが強いのが特徴です。
今回はそんなインタビューライティングの魅力と基本を知ってもらいたいという思いから、初心者でもわかるようまとめてみました。
インタビューは、記事単価を上げたいWebライターさんにもおすすめです。
インタビューライティングの魅力
インタビューライティングは本当におもしろい仕事です。
通常では出会えない人との会話から生まれる、とんでもない量の文章の責任をひとりで負って調整していくおもしろさは、この仕事でしか味わえません。
インタビュー前日は、緊張とワクワクの混ざった不思議な感覚になります。
- さまざまな専門家の話を聞ける
- 記事単価が高い
- 1つの記事にじっくり向き合える
インタビューライティングには、大きく分けて3つの魅力があります。
さまざまな専門家の話を聞ける
個人的にインタビューライティングで一番好きな部分です。
とにかくおもしろい話を聞ける、これに尽きます。
ここで言う「おもしろい話」とは、「笑い」はもちろん、壮絶な経験や独自の考え方など「感心」も含みます。
実際専門家の話を聞くことで、自分の努力の足りなさ・能力の低さ・視点の狭さなど、さまざまなことに気づけました。
大げさでもなんでもなく、インタビューは自分の人生や行動に大きな影響を与えています。
さまざまな道のプロが語る言葉はどれもおもしろく、重みが違うように感じます。
記事単価が高い
一般的なWebライティングの相場は1文字0.5〜3円ほど。
そのため5000文字程度の記事だと1案件で1万円いかないことも多いです。
一方インタビューライティングは、1記事3万円を下回ることはほとんどありません。
Webライティングよりも文字数は多くなりますが、それを加味しても高単価です。
CrowdWorks(「インタビュー記事」で検索)やLancers(「インタビュー記事」で検索)などのクラウドソーシングサイトで軽く検索してみても、通常のWebライティングよりも高単価なことがわかります。
肌感覚ですが、5万のインタビュー記事を1か月に4本こなして20万円は十分に現実味があります。
1つの記事にじっくり向き合える
インタビューライティングでは、取材した話をもとに読者の興味を切らさない記事が求められます。
構成と文章に徹底的にこだわり、1つの記事のおもしろさを上げる能力が必要です。
文章の自由度がとても高く、1つの記事にじっくりと向き合えます。
たくさんの文章をこねくり回したいという人にはたまりません。
ちなみにWebライティングは単価が安いことに加え、与えられたキーワードをもとに情報を集めてまとめる(SEOライティング)という性質から、たくさん記事をミスなくスピーディに書き上げる能力が求められます。
たくさんの情報をまとめるのが得意か、読みたくなる文章を書くのが得意か、で向き不向きを判断できそうです。
Webライティングは、インタビューライティングとは対極にあるイメージです。
インタビューライティングの流れ
記事単価が高いのは、難しいからじゃないの?
基本的なライティング力があるなら、インタビューもこなせます。
インタビューは実際に話を聞くため、難しいことだと思われがちです。
テレビ番組やYouTubeでの公開インタビューのイメージを持っていると、「自分にはできない」と思ってしまうでしょう。
記事ライティングのためのインタビューは、イメージより遥かにハードルが低いです。
まずは全体の流れを把握することで、ハードルの低さを感じてもらえばと思います。
インタビューライティングは大きく分けて5つの手順で成り立っています。
- 企画
- 打診
- 調査
- インタビュー
- 執筆
それぞれをもう少し深掘りしてみましょう。
企画
インタビューに限らずですが、記事作りは企画を考えるところから始まります。
ここで重要なのは、なぜインタビューをする必要があるのかです。
いわゆる、コンセプト設計です。
大前提としてインタビューは素材や情報を得るための手段の1つです。
インタビューしなくても記事が書けるなら、インタビューは必要ありません。
- 専門家や第一人者の話により記事の信頼性を上げるため
- オリジナリティを強めて他記事と差別化するため
- まったく新しい視点を取り入れるため
など、 インタビューの必要性が明確な記事ほど、コンセプトのしっかりした良い記事になることが多いです。
受注側だと企画をイチから考えることは少ないですが、企画コンセプトはライティング時にも重要です。
打診
企画が固まったら、インタビューを依頼したい人物・企業にメールで許可取りをします。
先方に伝えるべき情報は下記7点です。
- 依頼理由・企画コンセプト
- 対面/リモートどちらの実施か
- 実施場所(対面の場合)
- 掲載媒体
- インタビュー候補日・時間
- インタビュー費用(謝礼がある場合)
- 質問状(「調査」にて後述)の送付予定日
依頼対象とまったく繋がりがない、依頼する側の信用度が低い(個人でお願いする場合など)といった場合は、依頼理由や企画コンセプトの部分で熱量と丁寧さが必要です。
このあたりは編集者のお仕事でしょうか。
許可取りの際に必要となる作業は下記4点です。
- 撮影者(写真家)手配
- 場所手配
- スケジューリング
- 予算確保(撮影代・場所代・謝礼)
当たり前ですが、打診前に実現可能な状況を整えておく必要があります。
直接会う時間が作れない場合、質問に文章で答えてもらうメールインタビューという手段が取られます。
時間やコスト的なメリットは大きいですが、質問が意図通り伝わらなかったり返答が淡白になってしまったりと、深いインタビューにはなりづらいです。
調査
無事に許可が取れたら取材対象を徹底的に調査し、インタビュー内容を考えて質問状にまとめます。
取材対象の調査
取材対象が著名人かどうかで、調査は大きく2通りに分かれます。
著名人の場合、比較的情報を入手しやすいです。
- プロフィールを調査
- 過去のインタビューを調査
- ネット記事・SNSの内容を調査
- 関連書籍を調査
一般に公開されている情報がたくさんあり、それらを一通り読むだけでもかなりイメージを膨らませられます。
絶対におさえるべき質問に加えて他の媒体ではまだ聞かれていない内容を盛り込むなど、インタビュー内容も非常に考えやすいです。
有名すぎると情報が多くて調査が間に合わない…なんてことも。
著名人ではない場合、例えば専門家や商品の担当者などにインタビューを依頼した場合は、パーソナルな情報はなかなか出てきづらいです。
- インタビュー対象の一般論を調査
- 類似コンテンツを調査
- 関連用語を調査
- その人がどのように答えるかを想像する
著名人とは異なり、人そのものではなく聞きたい内容の知識面を深掘りすると、インタビュー内容を考えやすくなります。
商品や本など何かしらのコンテンツへのインタビューなら、実際に触れる・使う・読むことは必須です。
質問状の作成
調査を終えたら、質問状を作成します。
質問状とはインタビュー当日に聞く質問を羅列した書類のことです。
Q1. 自己紹介をお願いします。 Q2. この商品の開発コンセプトはなんでしょうか? Q3. 商品開発はいつ始まりましたか? ...
このように、具体的な質問を羅列します。
質問をそのまま書く場合もあれば箇条書きの場合もあり、特定のルールはありません。
質問状はインタビュー前に送付し、回答を事前に考えてもらうことで当日の進行をスムーズにする役割を持っています。
1時間のインタビューなら、ざっくり1問4分と考えて12個くらいの質問を用意していました。
インタビュー
事前準備が終わったら、いよいよインタビュー本番です。
記事用インタビューで重要なのは、上手く話すことではなく記事に必要な内容を聞くことです。
ここでは、インタビュー時におさえるべきポイントをまとめてみました。
- 社会人としての常識が超重要
- インタビュー開始時にまず録音
- 質問状通りに質問する
- 気になった部分・わからなかった部分を深掘り
インタビューで80点を取るために意識すべき方法です。
社会人としての常識が超重要
そもそもインタビューは、社会人として社外の人と会話をすること。
一般的なマナーは必要です。
- 身だしなみを整える
- しっかりあいさつする
- 聞き取れる口調で話す
- 万全の体調で挑む
- 時間を守る
すべて当たり前のことですが、意外とできていない人も多いんです。
例えば「時間を守る」にしても、インタビューに遅れないことはもちろん…
事前に決めたインタビュー時間をオーバーしない、オーバーしそうな場合は一言確認を入れることも重要です。
インタビュー開始時にまず録音
インタビューで一番怖いのは録音トラブルです。
長時間インタビューの後に「録れてなかった…」なんてことになったら顔面蒼白になること間違いなし。
恥ずかしながら、1度だけやらかしたことあります。
- 前日に録音機器を充電する
- 録音機器の保存容量を空ける
- インタビュー開始時に必ず録音するようルーチン化する
- ダブルレコーディング(2台の端末で録音)を徹底する
など、緊張の中で可能な限りミスしないよう、インタビューの事前準備リストを作ったり、手元の質問状に「録音をする」という手順をメモしておいたりするのも効果的です。
録音時には「それでは録音させていただきます」と相手に許可を取る必要があります。
質問状通りに質問する
事前に用意した質問状は、インタビューの強い味方となってくれます。
とくにインタビュー初心者は、質問状の内容を聞き漏らさないことを意識すると、緊張しすぎなくなるのでおすすめです。
手元にプリントした質問状を用意し、それを見ながら1つずつ質問してじっくりと話を聞くのが記事用インタビューの基本。
インタビュアーが話す時間は極力短くすべきで、必要なのはインタビュー進行のほか、相手の話に対する感心や相槌、追加質問くらいです。
記事用インタビューは入念に準備したうえで丁寧に進めるので、自分のような話下手でも何とかなります。
気になった部分・わからなかった部分を深掘り
質問状通りに聞くだけならメールインタビューとあまり変わりません。
重要なのは、気になったりわからなかったりした箇所を聞き直すことです。
インタビュー中に聞き取れなかった部分はもちろん、質問内容がうまく伝わらなかった箇所も聞き直しましょう。
会話の中で当日思いついた内容も質問でき、聞いた内容をさらに深掘りすることも可能。
これが対話インタビューの醍醐味です。
ふわっとした回答など、言語化され切っていない部分はとことん聞いてみるとインタビューがどんどんおもしろくなります。
執筆
インタビューの録音をもとに、原稿を書き上げます。
執筆は大きく分けて4行程です。
- 文字起こし
- 構成を考える
- 構成にあわせて原稿を組み替えて整える
- 推敲
文字起こし
録音を文章に書き起こす作業です。
文字起こしには3種類あり、状況に応じて使い分けられます。
- 素起こし
- ケバ取り
- 整文
文字起こしされた原稿を修正する場合もあれば、ライター自身で文字起こしを行うこともあります。
ライターが文字起こしをする場合、大抵は「整文」だと思います。
構成を考える
インタビュー記事は、文字起こし通りに原稿を書く必要はありません。
一度全文を読み返して…
- 一番おいしい内容/最も伝えたい内容はどこか
- 読者はどの順番で読めたら満足してくれるか
上記ポイントから、どのような文章構成が最適かを判断します。
いかに読み続けてもらえる構成にできるか、という勝負どころです。
構成にあわせて原稿を組み替えて整える
構成が決まったら、文字起こしの原稿を組み替えて繋がりを調整します。
会話的すぎて伝わりにくい箇所を意訳したり、語尾をインタビュー対象にあわせて調整したり、と細部までこだわるのが重要です。
インタビューは長文なので、途中で離脱しない文章が求められます。
この際に重要なのは、不要な部分の削除です。
インタビュー全文を掲載するととんでもない文章量になってしまうため、企画から逸れた内容をカットして文章をスリム化させます。
読みやすい長さにスリム化しつつ、一番おいしい内容はしっかり伝わるのが理想です。
推敲
完成した原稿を推敲します。
具体的には、読み直して違和感のある部分を修正していくのです。
- 誤字脱字
- 漢字の閉じ開き
といった基本的な部分に加えて…
- 読んでいて話の繋がらない部分
- 自分でも意味がわかりづらい部分
- あらためて読んだときに不要だと思った部分
などを調整します。
推敲でいちばん重要なのは客観的な視点です。
「うまく書けた!」と思って数日後に見直すと粗だらけ、というのは本当によくあります。